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[結成30周年特別企画]

「そろそろ月に帰ろうか」について「語ろうか?」VOL.2

寺脇 研さん の巻
絶滅危惧種劇団との深くて長い縁、と言えば
京都造形芸大教授 寺脇 研さん。激弾BKYUとの出会いは、1992年の代表作「バラード」(死刑囚と死刑執行人の物語)から始まります。その後2008年には、「グレイッシュとモモ」を自らプロデュースし、京都公演を企画。
今回の2002年「そろ月」初演を観ていただいている一人でもあります。翌年の長野での再演用パンフレットに、寄稿していただきました。
それからさらに15年。寺脇さんはその後の全作品も観ていただいており、
“酒井ワールド”を熟知している方です。
30周年記念公演に向けて、当時のパンフレットから再録させていただきます。

(2003年長野公演パンフレットより) 文:寺脇 研

BKYUの芝居とつきあうようになって、何年になるだろうか。かれこれ十数年ほど、ほとんど全部の公演を観て酒井晴人の世界に触れてきた。その印象をひとことにまとめれば、、「ザ・BKYU」という名の大河ドラマを見続けている感じ、とでもいおうか。すべての芝居がひとつになって、何か半永久的に連なる大きな「物語」のように思えるのである。もちろん、個々の芝居は全く別のストーリーである。たとえば、『グレイッシュとモモ』の元々ミヒャエル・エンデが設定した世界と、『カラフル』の現代日本の世界とは全然異質だ。しかし、どちらにも同じ強烈な臭いが痛底している。いや、それ以外のどの作品にも。それは、人間のだらしなさ、情けなさ、その一方ですばらしさ、崇高さといった「人間臭さ」である。言葉を換えれば、人間の愛。これに満ち満ちているんですね。設定された作品世界の場所がどこだろうと時代がいつだろうと、全く変わらない。舞台に登場するすべての人物に対して、愛がふりそそいでいる。BKYUの芝居はいつもそうだ。大河ドラマと感じてしまうのは、どの公演でも演じる役者が共通しているからだろう。看板女優(わたしも大ファン)東野醒子をはじめ劇団所属の俳優たちが、いつもまるで自分の人格であるようにそれぞれの芝居の登場人物を演じきるので、彼ら自身がドラマ「ザ・BKYU」の登場人物だと、つい錯覚してしまうのである。
でも、この錯覚も悪くないかもしれない。目の前で完結するひとつの芝居と、「ザ・BKYU」という名のどこまでも続く大河ドラマの両方をたのしめるのだもの。皆さんもぜひ、目の前の『そろそろ月に帰ろうか』をたのしむだけでなしに、これからドラマ「ザ・BKYU」の末永い観客になっていただけないだろうか。面白いことは、私が請負います。

寺脇 研(てらわき けん)/
高校時代から「キネマ旬報」誌に映画評を投稿、その後さまざまな映画雑誌からの依頼で執筆を続ける。漫画や落語にも造詣が深い。1975年、文部省(現・文部科学省)入省。その後数々の大きな職責を果たし、文部科学省のスポークスマンとして、全国の子どもたちや教師、親と意見交換しながら「教育改革」に取り組む。元文化庁文化部長。現在は、京都造形芸術大学教授。
近年は、映画・演劇製作も始め、2012年『戦争と一人の女』の映画化を企画。2作目として、佐野和宏氏の監督・脚本・主演の『But only love』(仮題)を企画製作中。演劇では、7月29日~8月2日まで、新宿・雑遊(ざつゆう)にて公演予定。